ハリの役目とは何でしょうか。まず、最初に考えるのがエサを魚の口へと届けてやる役目ですね。ウキを使ったり、あるいはサシエだけを潮に乗せて魚のいる場所へと運び、ここに美味しいサシエがあるぞっとアピールする役目ですね。
次ぎにサシエを見つけた魚がそのエサを食べたとします。こちらの思惑通りに魚がサシエを食ってくれたら、その魚が逃げてしまわないようにハリをがっちりと魚に掛けなければなりません。
うまく魚が掛かりました。次は掛かった魚に逃げられないよううまくあしらいながら取り込みます。魚に掛かったハリは、外れにくいような形状に加工してありますが、これだけでは十分ではありません。
ちょっと油断した隙に道糸を緩めてしまいました。すると、いままで張りつめていた糸が緩んだせいで、かんぬきと呼ばれる魚の口の真横に掛かっていたハリが、ぽろりと外れてしまったのです。
こういう事態を招かないようにいまのハリは、ハリ先に近い部分にイケとかモドリと呼ばれるものが付けられています。この小さな突起があるだけで、ハリは意外に外れにくくなるのです。
このようにして進化してきた釣りバリにはさらに工夫が加えられるようになりました。それがヒネリバリとネムリバリなのです。
ヒネリバリというのは、胴と呼ばれるハリ軸に対してハリ先が左右どちらかにひねってあるものを刺します。これはハリ先だけが曲がっているのではなく、先曲げと呼ばれる部分からハリ先までをひねってあるのです。 ハリ軸に対して右にひねってあるのがヒネリバリ、左にひねってあるのがカネリバリと呼ばれます。そしてヒネリのない真っ直ぐなハリをベタとかストレートと呼んでいます。 このようなハリは、何のためにひねってあるのでしょうか。ハリにハリスを結んで空中でぶら下げた状態で、ハリ先を上から押さえてやるとハリが回転します。
ヒネリバリは、この原理を応用しているのです。魚がエサと一緒にハリを吸い込んだとき、ハリスが張った状態だと魚の口の中でハリが回転し、口内のどこかに触れた瞬間にハリ掛かりします。そして、その状態で魚が泳ぎ出すと、より深くハリが魚に掛かりバレにくくなるわけです。
つまり、ヒネリバリとは魚にハリを吸い込ませて口の中でより深く掛けるハリなのです。だから、歯の鋭い魚には向きません。ハリを呑み込ませるのでハリスを歯でかみ切られる恐れがあるからです。
チヌの歯は、臼歯のような形をしており余り鋭くありません。だからハリを飲まれても歯でハリスを切られることが少ないのです。チヌバリにヒネリの入ったものが多いのは、このせいです。このようにヒネリバリはメリットがある代わりデメリットもあります。まず、ハリ先が垂直ではないのでエサが刺しにくいこと、仕掛けを回収するときにエサが回転しやすいことなどです。
ヒネリバリは、より掛かりやすく、より深く刺さるように工夫されたハリですが、ネムリバリは違います。
ハリ先が真っ直ぐではなく、ハリのフトコロ側に曲がっている形状のものをハリ先がねむっていると表現します。このハリは、魚がハリを飲み込んでも口の中では掛からず、滑ってきて、左右どちらかに口の端に掛かるように工夫されたハリなのです。ですから歯が鋭い魚などには有効ですね。
このようにハリの特製を考えて使い分けることが、上達への近道ではないでしょうか。