私のホームグラウンドである神戸港第七防波堤は全長約4.5kmの広大な一文字です。私は25年ほど前からこの堤防を中心に落とし込み釣りを始めました。たしか、釣り始めた当初はほとんどの釣行は、この七防だったと記憶しています。
何年ものあいだ一年中季節を問わず黙々と七防の4番と1番近辺の内、外を落とし続けていました。その当時は4月の桜が咲く季節が春の乗っ込みといわれていましたので、多くの落とし込み釣りの先人たちはこの時期からチヌを狙って釣りはじめ、10月の下旬ぐらいには落とし込み釣りのシーズンが終わりを迎えるのが一般的でした。
この当時の基本エサは七防で採取できる防潮ガニをメインに、タンクガニも使っていました。昔は七防によくついていたヘラヘラもその当時から特効エサとして春の乗っ込み時に使われていました。一部の人はアオムシも使っていたようです。しばらくしてイガイやフジツボなど今ではチヌの主食といわれているエサも使われはじめました。
ほぼ7ヶ月間の落とし込みシーズンが終わったあと、残りの5ヶ月、11月から3月まで私には他の釣りをする気持ちはまったくなかったので、秋の終盤から春先にかけて一枚のチヌを目標に落とし込み釣りをつづけていました。12月、1月、2月といった冷え込みのきつい季節は、私以外に落とし込み釣りでチヌを狙う物好きな釣り師はひとりもいませんでした。
エサはタンクガニ、地えび、フジツボの大型の身などを使って冬場のチヌの攻略法を自分なりにためしていました。当時の七防の落とし込み師たちは盛期でもアタリがなければ6ヒロ、7ヒロといった深場を目印で攻めていましたので、私も当然のように狙うタナは上層から底まで満遍なく探っていました。この当時は目印とヘチ釣り(関西ではほとんどヘチ竿を使っている人はいませんでした。)を交互に使っていました。タナを狙うときはタンクガニをメインに、底狙いは地えびが多かったと思います。
厳寒期でも何百回と落としていくと、タナは2ヒロ半を中心に喰いアタリは1回はもらうことができました。底でも日によっては何回もチヌが掛かったことがありました。底でチヌが掛かると前打ちで10mほど前から際底まで探って釣れることもありました。地えびをえさにするとメバルやガシラなども釣れましたが、キビレやマチヌも釣れました。一年を通じて、特にこの冬場の落とし込み釣りの経験が、後の私の「新しい深場のヘチ釣り」に大きな影響を与えてくれることになりました。