なかでも有名なのは、当たれば死ぬことから、テッポウと呼ぶ地方もあるトラフグだ。
フグ中毒はテトロドトキシンと呼ばれる毒素が原因で起きる食中毒だ。
その毒性は青酸カリの1200倍以上ともいわれ、0.5ミリグラムで致死量といわれるほど。
テトロドトキシンは海洋細菌によって作られるといわれている。
これは自然に海底の泥の中にたまり、その泥を食べる生物から他の小動物を経て、食物連鎖でフグだけに蓄積される。
なぜフグだけに蓄積されるのかは解明されていないそうだ。
このフグ毒は無色、無臭、無味で熱でも分解しない。
ちなみにトラフグの毒力表によると、卵巣は猛毒、精巣は無毒、肝臓は強毒で皮は無毒、肉、つまり身は弱毒ということになっているが、個体差があり季節によっても毒の強さが変わるそうだ。
フグ科の魚で無毒なのはシロサバフグとヨリトフグだけ。
ハコフグ科とハリセンボン科は同じように無毒で、どちらもうまい。
ところでカモメやネコに毒のあるフグをやっても決して食べないのは、姿や形で識別しているのではなくフグが体表から多量のテトロドトキシンを出すからだといわれる。
フグ毒と同じように怖いのが熱帯から亜熱帯地方で中毒することが多いシガテラ毒だ。
これもヒラマサやカンパチ、ハタ類、フエダイ科の魚など食物連鎖の頂点に立つ魚を食べたときに起きる。
有毒のべん毛藻を食べた巻き貝やカニ、小魚などを食べた大型の魚の体内に蓄積される毒で、手足のしびれや痛み、頭痛、下痢やおう吐が数週間、長いときには何ヶ月も続く。
日本では沖縄や伊豆諸島にシガテラ毒を持つ魚が確認されているが、カンパチやハタ類などすべての魚がこの毒を持つわけではなく地域性がある。