カサゴをガシラと呼ぶのは関西で、頭でっかちの魚なので、頭(かしら)が訛ってガシラになったのではないかといわれている。
ときにはガシとかガシやんと親しみを込めて呼ばれるが、それだけこの魚が身近な存在だからだ。
瀬戸内の下津井周辺ではアカメバルとも呼ぶが、瀬戸内沿岸ではホゴの方が一般的。
これは昔、米俵のようにわらで編んだ袋や篭の上部が全部あいているものをホゴとかフゴと呼んだためだ。
これになぞらえて大口を開けて上がってくるカサゴをホゴと表現したのだ。
九州ではアラカブの呼び名でおなじみ。
この魚をぶつ切りして煮込んだみそ汁は、郷土料理になっている。
面白いのは神奈川県三浦半島周辺の呼び名だ。
顔の周りに突起やまだら模様があって汚く見えるため、ツラアラワズ(面洗わず)と呼ぶが、おいしい魚だけに少し可哀想な気もする。
ガシラは普通の魚のように卵を産まない。
晩秋から初冬にかけて交尾し、メスのお腹の中で成熟した卵が12月から2月ごろに仔魚となって産み出される。
こういう魚を卵胎生魚と呼んでいる。
紀北、加太の漁師は、釣っても釣っても湧いてくる魚、と表現したが、カサゴはもともと多産で、産卵期に入ると1尾の魚が3、4回に分けて産卵するのが普通だといわれている。
カサゴは水深が2、3メートルの浅場から、50メートルを超える深い場所まで生息している。
だが漁師はこのようなカサゴとさらに深い場所にいる体色の鮮やかなカサゴと、はっきり区別している。
沖の深場にいるカサゴは、関東でカンコやアンポンタン、関西では沖ガシラと呼ばれているウッカリカサゴのようだ。
漁師はどうして見分けるのか、地ガシラと呼ばれるカサゴの方がうまいというし、出荷したときに明らかに値が違うのだ。
カサゴ大好き人間の僕は、最近になってようやく両者の違いがわかりかけてきた。
といっても外見から判断するのではなく釣り味と食味によるものだ。
これはあくまで主観だが、ウッカリカサゴは、最初にググッとアタリがあって強い引きを見せたあと、釣り上げる途中でも締め込むことがあるが、普通のカサゴは最初に引くだけで、途中の締め込みがない。
ということは、深場にいるウッカリカサゴの方が水圧の変化に強いといえるのではないか。
味はもっとはっきりしていてウッカリカサゴは筋肉質で身は硬いがカサゴほど甘みがない。
カサゴは身がねっとりした感じだが上品な甘みを感じるし旨みがあるのだ。
カサゴもウッカリカサゴも煮付けが定番料理だが、大型は刺身にしてもうまいし、魚ちり風の鍋も冬場には欠かせない。
小型は唐揚げにすると子供さんが喜ぶ。