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2014年4月10日

美味しい寒のクロダイ

ほぼ日本全国に分布していて、その生活の場が沿岸の浅場、最も人と接しやすい環境に棲んでいるせいか、釣魚の中でも十指に入る人気魚がクロダイではないでしょうか。
 

陸っぱりだけでなくイカダや船からも狙われることが多く、その釣り方は多種多彩、中には100年を超える歴史がある伝統釣法が今も脈々と受け継がれています。
 
 
ところがこれだけ人気がある魚なのに、釣った魚を食べる人が意外に少ないんですね。
 
なぜでしょうか?。
 
クロダイは、本来、雑食性の魚です。
 
虫エサから貝類、カニやエビなどの甲殻類も好物ですし、サナギやスイカなども平気で食べてしまいます。
 
その上に湾奥の余り潮の動かない、汚れた海でも平気で生活することができるので、釣れた場所によっては臭いがきついものがいます。
 
このあたりが敬遠される理由でしょうか。
 
 
しかし、水が綺麗な海域で冬場、特に寒の時期に釣れたクロダイは、これが同じ魚かと思うほど味が豹変します。
 
そんな寒のクロダイの美味しい食べ方を2つほど紹介しておきましょう。
 
 
マース煮という料理をご存じですか?。
 
マースとは沖縄の方言で塩のことです。
 
マース煮は沖縄の郷土料理の一つで、味つけに塩だけを使って魚を蒸し上げた素朴な料理なので、マース蒸しと呼んだ方がぴったりなのですが、その味の深さに驚くほどです。
 
 
クセのあるクロダイには、このマース煮がぴったりです。
 
作り方は実に簡単です。
 
海水程度の濃い塩水を作り、蒸し器を使ってその塩水で蒸し上げただけの料理ですが、味は濃厚で食べ飽きません。
 
 
瀬戸内地方では、クロダイをチヌと呼びます。
 
そして、寒の時期に釣れたチヌを「鍋割りチヌ」と表現します。
 
余りのおいしさに鍋をつつき過ぎて、壊してしまうという意味の呼び名ですが、この時期のチヌは、確かに刺し身や塩焼きにしても美味しいのですが一番のお勧めは酒蒸しです。

ほどよい大きさのチヌなら1尾をそのまま、大きすぎるようなら切り身にしてもいいですよ。
 
鱗を取り内臓を出したら、きれいに水洗いして昆布を敷いた蒸し器の中へ入れます。
 
チヌだけでは彩りがないので、豆腐や白ネギ、シメジなどをあしらって、チヌといっしょに火にかけます。
 
もちろんこのときに酒を振りかけるのを忘れないでください。
 
 
湯気が出始めてから15分ほど蒸しあげたら十分です。
 
ほくほくと全身から湯気をあげるチヌの表面に、できればスダチをさっと搾って身をほぐしながら食べます。
 
酒がもたらす効果でしょうかね、くさみが抜けたチヌの身は、ほどよく締まってうまみ成分だけがさらに濃縮されたように感じ。
 
酒の肴になるし総菜にもなります。
 
酒蒸しはそんな料理なのです。