この地方名は、昔から身近にいて親しまれてきた魚ほど数が多く、一種のバロメーターになる。
アブラコやアブラメは、脂魚の意であり、脂という字は旨い肉を表すから、脂魚は旨い魚だということになる。
が、ほかに油目と書かれることも多い。
これは、まっとうな白身魚なのに脂肪が多く、脂っこい感じがするので油身魚とも。
また、きめ細かいウロコをしていて、それがヤスリの油目に通じるところから生まれたという説もある。
モヨとかモズ、モウオは、海藻が多いところを好むためで、藻魚の意味だ。
ネウは根魚であり、シジュウは一年中釣れるから、広島や山口でモミダネウシナイと呼ぶのは、この魚があまりにもおいしいために、籾種を買うお金まで使ってしまったという意味だ。
兵庫県の明石周辺で大型をポンと呼ぶのは諸説あるが、仲買人がこの魚を仕入れるとき、1本、2本と数えたのが始まりという説が有力だ。
西日本にはアイナメ科アイナメ属の魚が2種生息している。
ひとつがアイナメでもう1種がクジメだ。
この両者の見分け方は側線の数を数えることだ。
アイナメの側線は5本だが、クジメには1本しかない。
ただ、よ~く観察しなと非常に分かりにくい。
西日本で釣れた魚の場合、尾ビレの後縁で見分けた方が簡単だ。
尾ビレの後縁がほぼ真っ直ぐかわずかに湾入していればアイナメ、丸くなっていればクジメである。
アイナメの産卵期は晩秋から冬、藻が多い岩礁帯や砂礫底で行われる。
産卵が終わるとメスはどこかへ行ってしまい、卵がふ化するまでの約1カ月間、オスが守る。
ヒレや口を使って絶えず新鮮な海水を卵塊に送り、卵を食べに来た魚を撃退する。
だが、その中にはメスのアイナメもまじっているというから驚きだ。
卵がふ化し数㌢に育つまではイワシのように海面近くで浮き魚として育つ。
この時期は、体が青緑色に輝き親よりもっとスマートだ。
こんな稚魚が5月ごろになると突然、体色が茶色っぽくなって底棲魚にかわるから不思議だ。
キスやカレイと並ぶ投げ釣りの3大対象魚のひとつ。
根掛かりとの闘いつつ大型を掛けるとごくごくと首を振るような独特の引きをする。
アイナメの本場明石周辺では、船釣りも盛んで文字通り1本、2本と呼ぶにふさわしい大型が数多く水揚げされていたが、兵庫県南部地震以来激減している。
旬は晩春から初夏だといわれるが、1年中ほぼ味が変わらない魚だ。
夏はさっぱりしたあらいがお勧めだが、クセがないので塩焼きや煮付け、照り焼きに唐揚げと、どんな料理にもあう。
また、焼きたての身をほぐして肝と和えてもうまい。