ところが人間は、安くて栄養価も高いというのに昔ほどイワシを食べない。
取れたイワシを生鮮食品として利用しているのは、漁獲量の40分の1程度、残りはそのまま養殖魚のエサになったり、フィッシュミールと呼ばれる魚粉になって養鶏や養豚、渓流魚の養殖のエサなどに使われている。
市場では、6~12cmのマイワシを小羽(こば、または、しょうば)、12~18cmのものを中羽(ちゅうば)、20cm程度のものを大羽(おおば)と呼ぶが、目刺しなどは中羽、よく脂が乗った大羽は刺し身やタタキにあう。
「イワシ、七度洗えばタイの味」といわれるほどで、ほどよく洗って脂気を落とすとタイにも負けない味になる、それほどうまいという例えだ。
特に新鮮なイワシの刺身は、裂きなますとも呼ばれ、二杯酢やショウガ醤油で食べるとうまい。
イワシの身は金気を嫌うので手開きにするのがセオリーだ。
他に塩焼きも「イワシの焼き食いめし1升」といわれるほど。
少し鮮度が落ちたものは、針ショウガと梅干しをいっしょに煮たものが最高。
マイワシの仲間のウルメイワシは、目に厚い脂瞼(しけん)と呼ばれる脂肪の層があり、目がうるんだように見えるところからこの名がある。
目刺しにするとマイワシよりうまい。
カタクチイワシを干したものがゴマメ、これを甘辛く煮たものが田作り。
ゴマメは五万米(ごまめ)とも書かれるように、この魚を肥料にすると5万俵もの米が取れたから。
田作りは、田んぼの肥料として使われたためだ。