今から20年ほども前、ブラックバスが大ブームになる以前にフレッシュウオーターのルアーファンが密かに狙っていたのがライギョという魚です。もともと日本には生息していなかった外来魚ですが、持ち前のどん欲さと環境に適応するしぶとさでどんどん勢力を伸ばし日本各地に広がった魚です。
いま日本で釣り人がライギョと呼んでいる魚には2種あります。ひとつが朝鮮半島から持ち込まれたカムルチー、もうひとつが台湾原産のタイワンドジョウです。朝鮮半島原産のカムルチーが日本に持ち込まれたのは1923年です。顔が爬虫類を連想させるので、日本では食べる人はほとんどいませんが、原産国の朝鮮や中国では洗いや酢の物にして食べるそうです。
ただ、ジストマの幼虫など寄生虫が多いので生食は避けた方がいいでしょう。こんな魚ですが朝鮮では強壮の効果があるといって新婚の夫婦や妊婦に食べさせるそうです。
もうひとつのタイワンドジョウは、ライギョの語源になった魚で台湾では雷魚と書いてライヒーと呼びます。日本に持ち込まれたのは1906年、奈良県郡山市の金魚商が南洋の珍魚として、この年、堺で開かれた内国勧業博覧会の水族館に出品したのが始まりだそうです。
カムルチーもタイワンドジョウも、水温が下がる冬場は泥に潜って冬眠しますが、春、水が温み始めるとそろそろ活動を始めます。かなり水の汚いため池などにも棲息できるのは、この魚が空気呼吸できるからです。空気呼吸は、水温が高くなるほど頻繁に行われ、たとえば水温が20度だと1分に1回ぐらいの割合ですが、15度だと30分に1回に減少します。
夏場が一番の活動期で、この時期に大雨が降ったりすると濡れた草の上を這って他の池に移動するという芸当もできる魚です。何しろ大食漢で、一度にトノサマガエルを10匹ぐらい平気で平らげるそうです。この食欲だから小さな池だとすぐにエサを食い尽くしてしまうため、雨中に移動するといわれています。かと思えば、これほどの大食漢なのに半年ぐらいエサを食べなくても生きていられるほど生命力が強いそうです。
ライギョのベストシーズンは、暑い夏。これからが本番です。それも朝夕のめずめ時ではなく、水温がもっとも上がる昼日中にトップウオータープラグやソフトルアーを使ってサイトフィッシングを試みて下さい。キャスティングポイントは、浮き草や葦、ガマなどが生えている水際です。そんな場所ではライギョがポカンと浮いていることがよくあるので、まず、水際にそっと近寄って魚がいるかどうかを確認して下さい。
もし、ライギョがいたら、その少し先へルアーをキャストし、水面上をアクションを付けながら引いてきます。余りエサを食べるが上手な魚ではないの、食べるのに失敗すると何度でもアタックしてきます。そんなやり取りを繰り返しながらサイトフィッシングを愉しんで下さい。1m近い大物になると引きが相当に強く一筋縄ではいきませんよ。
次回は、魚の追い星とは、について考えてみたいと思います。