海の中は常に弱肉強食の世界です。
弱いもの、小さなものが強いもの、大きなものに食われる運命にあります。
ゆえに、力弱きものは自分を守るさまざまな手段を身につけているのです。
弱い魚の代表、あるいはほかの魚の餌になることが多い魚として知られるのがイワシですね。
イワシを漢字で書くと魚編に弱い。
この字が端的にこの魚の運命を表しています。
でも、そんな弱いイワシでもなす術もなくほかの魚に食われているわけではありません。
それなりの護身術を身につけているのです。
イワシに限らず弱い魚、あるいは小さな魚は常に群れを作りますね。
これも護身術のひとつなのです。
イワシのような小さな魚でも大きな群れを作ると、それは魚食魚にとって驚異になるのか正面からは襲わなくなります。
外側から群れを追い詰めて群れを乱し、混乱して群れからはぐれた魚だけを狙うのです。
だから常に群れの中心にるイワシはなかなか食べられない、こうして群を護るのですね。
もうひとつイワシには、独得の護身術があります。
それは彼らの体を護っている鱗にあります。
イワシの鱗は非常に取れやすいですね。
この取れやすい鱗が護身に役立っているのです。
大きな魚がイワシをひと飲みにしようと襲いかかっても、くわえ方が悪いと鱗がズルズルと剥がれて体がするりと抜けてしまうのです。
こうしてすり抜けることによって身を護っているのです。
イワシが魚食魚に襲われるとウロコが取れて海の中できらきらと輝きます。
これにも目くらましの効果があるのです。
戦闘機が誘導ミサイルから逃れるとき、ミサイルのレーダーを混乱させるためにアルミ片のようなものを撒きますよね。
イワシの鱗は、それと同じような効果を期待してのものなのです。
大量のウロコを落とし、あたかも群がそちらへ行ったかのように見せかけるわけです。
また、イワシに限らず青物と呼ばれる魚は、背が青くて腹が白いのにも大きな理由
があります。
これは上からの敵と下からの敵から身を守るための手段なのです。背が青いのは上空から見たとき海の色に溶け込むため(鳥などの襲われないため)で、下からの敵は同じように白い腹が海の色に溶け込んで見にくくなるためなのです。
これは、海へ潜って水面を見上げたとき真っ白に輝いて見えることからも分かりま
すよね。
イワシのような取れやすい鱗とは反対に、鱗が身を守ってくれる魚も沢山います。
たとえばハコフグのような魚は、鱗全部が融合して硬い甲冑のようになり、大きな魚にかぶりつかれても噛みきれないし、フグの仲間のハリセンボンなども敵に襲われると海水を飲み込んで体をふくらませ、いがぐりのようなトゲを立てて身を守ります。
もっとも変わった護身術を身につけているのがトビウオですね。
トビウオはなぜ飛ぶのか、その答は敵に襲われたとき空中へ飛び出してわが身を守るためなのです。
大きな胸ビレを持ったトビウオが飛ぶのは分かりますが、空を飛ぶイカがいるとい
ったら、信じてもらえるでしょうか?。
でも、実際にはスルメイカの仲間にフライイング・スクイッド(飛ぶイカ)と呼ば
れる種類がいるのです。
そして、水産庁の調査船「照洋丸」が北太平洋で編隊飛行しているイカの群れの撮影に成功しているのです。
なぜイカが空を飛ぶのか、その理由はトビウオと同じで敵に襲われたときの防御法なのです。
では、トビウオのように大きな胸ビレがないイカがどうして飛べるのでしょうか?。
この謎はまだよく解明されていないのですがジェット噴射によって空中に飛び出し足(実際は腕)を大きく広げて足と足の間に薄い幕を張り揚力をえているといわれています。
こうして、様々な魚の護身術を見ていると、こういう魚は、こうして攻略すればいいのだという方法が少し見えてきませんか。
次回は、魚の視力について考えてみましょう。