「キタマクラ」という和名は、これを食べると北枕に寝かせられるということから付けられた。太平洋沿岸や九州沿岸、伊豆諸島や小笠原諸島などに分布しており、水深30m以内の浅い岩礁域や藻場に多く生息する。棘皮動物、軟体動物を捕食している貪欲な肉食魚。磯釣りや堤防釣りなどをしている時に外道として釣れる魚ではあるが、硬い歯で釣り糸を噛み切るので、釣り人からは嫌われている。体内に猛毒のテトロドドキシンを持つもので、食用としては認められていない。フグ科としては珍しく筋肉と卵巣は無毒で、肝臓と腸は弱毒、皮膚は強毒といわれているので、釣りでかかった際は、軍手などで触り、他の魚と同じクーラーボックスには入れないように注意が必要。
フグ類としては側扁した体つきである。老幼による体色や斑紋の変異が大きいが、雌雄ともに体側に2本の暗色縦線があり、エラの前でつながっている。雄の腹部が青くなっているのは婚姻色で、腹中線の皮が線状に盛り上がるが、雌の腹部は白く、そのような線はない。喉の辺りから腹部にかけて小さな棘がまばらにあるので触る際は注意が必要。体長は大きいものでも全長13cm程度までで、雄のほうが雌よりも大きくなる。小さなオチョボ口がカワハギに似ているのも特徴の一つで、キタマクラは硬く強い歯を持っている。
きちんとフグ調理の免許を持った人であれば捌くことができ、その身は透明感があり、お刺身で食べることもできる。しかし、キタマクラは小さい魚なので、捌いて安全な部分のみになるとほとんど食べる部分がない。そもそも身の部分があまり美味であるとは言えない。その他のフグと同じようにフライや鍋にしてもあまり美味しくはないと言われている。猛毒や調理の手間から、食用には向いていない。
本種の体内にある猛毒のテトロドドキシンは、食後20分~3時間程度の短時間で中毒症状が現れると言われている。症状が軽い段階では口唇部や舌の痺れ、歩行障害や頭痛や腹痛などの症状があり、重症になると、全身のしびれ、呼吸障害、意識障害などになり、最悪の場合は死に至ることもある。フグの内臓や肝臓には高濃度の毒素が貯蓄されているので、食べる際は専門の方や、フグ調理の免許を持っている方に捌いてもらうことを必要とされている。キタマクラの場合、皮膚の粘液にも毒素があるので、触る際にも素手で触らないなどの注意が必要である。
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